お客様のご要望
高齢者のお客様から息子夫婦が住んでいる建物のことで相談を頂きました。
- 私も家も若くはないので、今後の事も考えて今のうちにリフォームをしてあげたいと考えている。
- 特に屋根の瓦がところどころ破損や脱落してしまっているので、屋根は新しくしてほしい。
- また、数年でまたメンテナンスするような中途半端な修繕はしたくないので、外壁は色あせなどで見た目が悪くなっている所なども一緒にメンテナンス出来ればと考えている。
全ての外装リフォームを検討中ですので、平井板金さんの意見を聞かせてほしいとの事でした。
現場調査
現場調査をおこなって建物の状況を確認後に、お見積もり内容などを判断させていただきました。
建物の状況
築年数は30年前後でした。
建坪で40坪以上ある建物です。
屋根はセメント瓦で部分的に瓦のズレや釘の抜けなどが発生しているので雨漏りしている可能性がありました。
色あせやコケもあるので見た目はあまりよくない状態でした。
外壁は吹き付け塗装の窯業サイディングでした。
塗膜の色あせや劣化が見られるのと外壁の張り方に問題があり、施工不良による塗膜の剥がれが発生していました。
軒天井、破風板は外壁と同様に吹付されており、色あせが見受けられました。
雨どいは破損は無いが、他箇所と同様の色あせや所々に変形が出ていました。
ベランダ床に膨れが発生していました。
しかし、お客様の知り合いの方にベランダ防水はご依頼するということで、見積もりから外させていただきました。
分離発注の場合は段取りを間違うと施工品質が下がる事がありますが、今回の工事では支障がほぼ無いと判断し承知しました。
調査後のご提案内容
①断熱材付のガルバ屋根と石粒付きガルバ屋根
お客様から耐久性の心配の声がありました。
既存のセメント瓦の耐久性(40年位)を考えると、息子夫婦様が住んでいる間のいつかは屋根の葺き替えを行う必要があります。
そう考えると今の屋根を残す補修をするよりも、新しい屋根に葺き替える事が良いと考えました。
地震の心配もあるので、屋根を軽くしたいということもありガルバリウムの屋根材でのご提案です。
平井板金でガルバリウム材の屋根を選ぶ場合は、「断熱材付きのガルバ屋根材」か「石粒付きのガルバ(ジンカリウム)屋根」のどちらかを選ばれる事が多く、今回は2パターンでお見積もりを作成しました。
②外壁のカバー工法
費用削減の為に外壁はカバー工法です。
既存の外壁は通気増が少ないので、壁内結露を防止する為に通気胴縁を施工してから外壁を張ります。
外壁に使用するコーキングは、高耐候コーキングでお見積もりです。
③軒天井、破風板などの板金包み
軒天井と破風は外壁と同じ素材と塗装でしたので、このままでは早期にまたメンテナンスする事になると考え同じ素材のガルバリウムの板金包みでご提案しました。
他社のなかには工事費用を安く見せるために必要な工事を減らしたり、利益になるものだけしか提案しない所もありますが、弊社は家とお客様のためになるリフォームのご提案を心がけてます。
④雨どい交換
雨どいも忘れてはいけない箇所です。
劣化の具合やライフプランによっては塗装を提案する事もありますが、リフォームのバランスを考えて今回は取り換えでのご提案です。
⑤仕様内容
屋根材 | Ds’ルーフィング ディプロマットスター(色:エバーグリーン) |
ルーフィング | 田島ルーフィング PカラーEX+ |
外壁材 | アイジー工業 シャドーライン(色:1階メルティ―ショコラ、2階ミルク) |
軒天井・破風板材 | 破風板材:ニスクカラーt=0.35(色:軒天井ウールホワイト、破風しんちゃ) |
雨どい | Panasonic シルビスケアPC50(色:しんちゃ) |
⑥概算内容
工事期間 | 約2か月程度 |
工事内容 | 仮設足場設置 瓦屋根解体 屋根工事 外壁カバー工事 板金工事 雨どい工事 塗装工事など |
費用 | 屋根葺き替え一式 163㎡ 合計240万くらい 外装カバー一式 157㎡ 合計230万くらい 雨どい一式 合計45万くらい 軒天井など板金工事一式 61万円くらい その他 安全対策費、諸経費、税金など |
※2023年の見積もり金額内容です
工事の流れ
瓦屋根解体工事
瓦そのものの劣化は少なかったですが、瓦のズレや釘の浮き、漆喰の劣化などがありました。
そしてなにより驚いたのは…大量の鳥の巣の残骸です。
幸いヒナはいませんでしたが、巣は合計8個はありました。
巣ができるということはそれだけ隙間があったとも言えます。
そして隙間があるということは、雨が侵入して雨漏りが発生する可能性があります。
幸いにも大きな劣化したような雨漏りはなかったので、ルーフィングの防水が機能して漏水を防いだと考えられます。
ルーフィング施工
ルーフィングは工事中の防水や施工後の2次防水、屋根材に発生した結露から下地を守るなどの役目があります。
弊社の屋根の葺き替え工事では、実績のある改質アスファルトルーフィングを使用することが多いです。
建物によりますが高級なルーフィングも存在しているので、リフォームにおいては無理に高品質な建材を選ぶ必要はないと考えています。
大切なのは適切な施工方法で、例えば漏水リスクの高い谷部は2重に施工する事などが上げられます。
屋根の施工
ディーズルーフィングの特徴は、金属でありながら表面は「石粒」である所です。
塗装のメンテナンスが不要で優れた耐久性があります。
見た目が金属っぽくないので、自然なデザインや優しい印象を好む方におすすめな屋根材です。
過去の工事実績もありますので参考にしてください。
ディーズルーフィングの施工では、本体以外の下地材もガルバでリウムで施工します。(※納まりが悪い場合は、木下地を使用する事もあります)
木材のような腐食が無いので、この施工だけで風で棟板金が飛ばされるなどのリスクが激減します。
外壁カバー工事
既存の外壁が窯業サイディングの場合は塗装又はカバー工法を行うことが多く、状態が悪い場合には張り替えをします。
目安として10年〜30年くらいは塗装メンテナンスで、25年以上は塗装・カバー工法・張り替えのいずれかでしょう。ただし、建物の状態やライフプランで一概には言えないので、プロの意見を参考にしましょう。
今回はカバー工法で、既存の外壁の上に新しい外壁を張る施工方法で工期短縮や費用削減などメリットがありますが、隠れたデメリットもありますので理解した上で検討しましょう。
【メリット】
- 解体工事を行わないので費用が安くなる。アスベストが含まれる場合は恩恵が大きい。
- 工程が減るので工期が短くなる。
- 施工中の雨漏りリスクが減り、施工後も防水層が2重になるので雨漏りに強くなる。
- 外壁の層が増えるので防音、断熱効果が増す。
【デメリット】
- 新しい外壁の重さがそのまま建物重量として増すので耐震性が悪くなる。
- 古い外壁が残るので後々建物を解体するときに高くなる可能性がある(解体費は年々上昇している)
- 窓やベランダ手すりなどの既存箇所の納まりが悪くなることがあり、見た目が悪いこともある。
- 施工ミスで通気層を塞いでしまうと壁内結露が発生して躯体劣化を加速させてしまう。
通気層
近年の建物は断熱性や気密性が高まっており、その上で重要な役割を果たすのが通気工法です。
新築では一般的な通気工法ですが、リフォーム業者や職人の中には通気工法の意味を理解していない事が多く、間違って塞いでしまうといったトラブルが今後発生する可能性が高いと考えられます。
現在では一般的な通気工法ですが、古い建物だと通気層がそもそもない場合があります。
通気層がない外壁に直に外壁を張ると壁内の湿気が逃げ道を失い、壁内結露がおこりカビの発生や下地材の劣化などのリスクが高くなります。
今回の建物は通気層が無い外壁だったこともあり、新たに下地を設置して通気層を確保しています。
通気層は土台水切り(外壁の一番下の箇所)から空気が入り、外壁内の通気層を通過して上部の通気見切り(写真の外壁上部、穴が多数空いている部材)から排出されてる事で空気が循環する仕組みです。
板金施工
軒天井やベランダ笠木などの古い箇所も、すべて板金でカバーしました。
外壁材のガルバリウム鋼板と同じ0.35mmの厚みの原板を自社加工して施工しているので、耐久性はもちろんの事色々な色や形状に対応できます。
雨どい施工
ゲリラ豪雨が増えている昨今では、昔ながらの半丸形状の雨樋では雨がのみ込めずオーバーフローする事があります。
既存の雨どいは角樋で小さめの形状でしたので、少し大きなシルビスケアPC50での施工しました。
屋根が大きな場合は更に大きなシルビスケアPC77やファインスケアなど様々な雨どいがあるので、屋根の大きさに合わせて検討すると良いです。
その他のメンテナンス
窓の庇屋根や戸袋などの既存を利用するものは塗装でメンテナンスを行い、換気フードなど安価なものは交換をしました。
ビフォーアフター
Before After Before After Before After Before After
暮らしの想像と家のバランス
カバー工法をおすすめする建築業者は多数ありますが、上記でも記述したメリットとデメリットを理解した上で検討する事が大切です。
例えばカバー工法は耐震性が悪くなると説明しましたが、ガルバの外壁材は5㎏/1㎡です。
既存外壁に足しても1.3倍程度しか増えないので、建物全体の総重量(一般的には約16トン)でいうと僅かな問題と言えるでしょう。
しかも今回は屋根を瓦から金属に葺き替えているので、家のトータルで考えると耐震性は向上していると言えます。
暮らしを想像したときに今回のお客様の場合は息子夫婦の為のリフォーム。
これから40年〜50年と住み続けるかもと想像が出来ます。
そう考えると間違って費用優先で耐久性の低い材料を選んでしまっては、近いうちに大きな改修工事を行う可能性が高いです。
金属が割高だったとしても耐久性が高い素材を使用する事で、費用対効果が高くなることはあります。
そういった考え方が暮らしかたと建物の性能のバランスを良くすると言えるでしょう。
さまざまな施工業者がありますが、平井板金は闇雲に工事すればお金がもらえるとは考えておりません。
お客様が抱えている悩みや不安を解消するために工事であり、その為には欠かせないのが知識と技術力を磨き続け、お客様に寄り添う事が大切であると考えております。
だから、もしもご不明点やご相談がありましたら気軽に弊社までご連絡頂きたいです。
平井板金はお客様の不安を笑顔にする為に工事しております。